ガンダム水星の魔女、本当に「舞台」がわからない。わからなくてもいいのが受けていることにちょっと絶望している。

nuryouguda.hatenablog.com

グダちん先生の感想にとても共感している。

「わからない」のではなく「世界観とか舞台感とかそんなことは問題にしていない」「つくる気がない」としか思えないんだよね>水星の魔女

現代とか学園とかRPGナーロッパってのは「そういうもん」という視聴者/読者の共通認識のもとに世界観はすっ飛ばして「キャラクター」を描くことに専念できることで成り立っている。

ところが、「リアルロボット系アニメ」ってのは、そこを描くことがあるていど宿命だと思っていた。「そのロボットが活躍する世界」を描くことではじめて「リアル系」っていう意味があるものだと考えていたからだ。

ガンダムである程度確率したUCワールドなら、そこを端折ることができる。そのかわりガンダムというかモビルスーツというものに「ちゃんと兵器っぽい」という演出の制約がある。

「∀」「Gレコ」ではかなり丹念に世界から描き直すことでスーパーロボットと化したMSとその世界の関わりを出せていた。UCワールドを確立した御大本人がそれをやったことが偉大なことである。だからフォトン月光蝶みたいなハチャメチャパワーでも受け入れることができる。

初のアナザーであるGガンでは15秒のイントロと90秒のオープニングで「キン肉マン」だと認識可能だった。1話を見ればアイアンボーグなモビルトレースシステムの抜群の一体感で認識できる。

「W」「X」「SEED」「AGE」でも不満はあれど、UCをなぞりながらも別だけどという説明を入れながらも、ああいうロボット(モビルスーツ)が活躍する世界だということの構築はそれなりにそこはやっていたと思う。とはいえ「太陽系の範囲で宇宙に進出した人類の戦い」というフォーマットからは逸脱できなかった。「鉄血」は雑すぎた。

「水星の魔女」であるが、もう完全にMBS 日曜日5時からロボットアニメ「スタードライバー 輝きのタクト」である。銀河美少年と十文字団が決闘するロボットアニメである。「サイバディ」という謎のロボット、それを動かす「電気棺と仮面」とか「銀河美少年」とか「アプリボワゼ!」とか「謎の決闘空間」が存在し、1話見ればだいたいわかる。いやわからないのだが、あそこまでやってくれれば「ごく閉じられた不思議の島の学園でサイバディという謎のロボットが巫女を争って決闘する」「そういうもん」だと納得できる。

だが、水星の魔女は同じことをやりながら、使っているのが太陽系近辺リアル系MSワールドを定義し直さず「企業の軍事製品」であるUCというかユニコーンぐらいのMS設定をそのまま借りて使っているので、「戦車道なら仕方がない」で済んだガルパン謎カーボン以上に決闘システムが成立すること自体が「謎」である。

あのコロニーらしき学園でバンバンビーム撃ち合ってツノ折る前に死者しか出ないんじゃないだろうか?謎の無敵外壁も謎カーボンコクピットもなしで。

そういう意味でまだ極めてファンタジー学園であることをちゃんと描いた「スタードライバー」のほうが、すんなり飲み込めるのだ。

盛大に滑った「スタードライバー輝きのタクト」だが、異能学園ロボアニメとしてはとてもケレン味があってよくできている。ロボットのデザインを世界観のほうに寄せすぎてカッコよくならなかったのが滑った要因の一つだろう。このタイトルを「ガンダム」と「魔女」にすれば受けたというなら、あの頑張りはなんだったのかと悲しくなる。

とはいえ、面白い面白くないでいけば、キャラクターとストーリーはそれなりに面白いですよ>水星の魔女。

面白いんだが、それを世界観構築ガン無視しながらリアル系ロボットとしてプラモデルで売っていくという不誠実さが「面白い」だけでスルーされてしまい、かつ成功するなら、そりゃこういうガノタがこじらせているだけと言われても仕方がないけど、それでもガンダムから頑張ってきた過去の偉大な作品たちの志が侮蔑されているような気もするんだよな。

それにガンダムというタイトルをつけることを憚らないバンダイにも。

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水星の魔女が評価されるなら、同じMBSの日曜日5時枠ロボットアニメで盛大に滑った「スタードライバー輝きのタクト」の志を再評価してあげてほしいな。1話、本当によくできてるから。