残念なWEB
読み応えのあるインタビューだった。かなりだらけた感じではあるが、梅田望夫氏の今の気持ち、のようなものを非常に引き出せているのではないかと思う。ユカタンGJ!
日本のWebは「残念」 梅田望夫さんに聞く(前編)
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0906/01/news045.htmlWeb、はてな、将棋への思い 梅田望夫さんに聞く(後編)
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0906/02/news062.html
梅田氏のいう「残念」という気持ちは、僕はこう考えた。
「WEBは一人一人の知を蓄積し、連動させ増幅させる巨大な集合知性になれる可能性があったのに、日本ではネタの増幅器にしかならなかった。」
ということだと思う。だがそういわれても「日本とアメリカ」で括られてしまうとムムムと思う部分もあるのでもうちょっと具体的に考えてみたい。ここで言われている「アメリカ」とはGoogleの事であり、続いてAmazon、Yahoo、まあそれぐらいだと思う。で、ここで言われている「日本」とは2chであり、ニコ動、pixiv、mixi、はてな、等だろう。
Googleがやったこと
- とりあえず世界中のWEBサイト全部集めてしまおうぜ!そしたらきっと人類の知識が集まるよ!>search
- とりあえず世界中の地図全部集めてつなげてしまおうぜ!>Map
- とりあえず世界中の航空写真集めたら地球になるんじゃね?>Earth
- とりあえず世界中の道路写真全部集めてしまおうぜ>streetview
- とりあえず世界中の本全部集めてしまおうぜ>Books
- とりあえず世界中のメール全部集めてしまおうぜ>Gmail
- とりあえず世界中のドキュメント全部集めて>App
- etc
とにかく世界中のデジタルデータを集めまくっている。それと検索というシステムの連動はまさに鬼に金棒、そのうち全部の「知」を集めてしまいそうだ。Booksやストリートビューのような「途方もない力業」すらやろうとしているのだから。(ま、日本地図作った人もそうだったし)
Amazonがやったこと
- とりあえず世界中の投稿ビデオを
- とりあえず世界中のつぶやきを
アメリカのサービスに多く感じるのは「覇」の思想だ。全部。そのうち全部。とにかく集める。たぶんそんな感じ。別に意識して世界中を見渡しているわけじゃない。生まれたときから USA as No.1、USA is World. そういう感覚だ。この感覚は日本人には決してないモノだと思う。Googleが集めた、これから集めるであろう知の集合は、きっとアメリカという国家がなくなっても維持されようとするんじゃないだろうか。
翻って日本はどうか。
- おまいらなんか書け
- おまいらなんか置け
pixiv
- おまいらなんか描け
はてな(Bookmark)
- おまいらなんか突っ込め
mixi
- おまいら友達紹介しる
やっぱりなんというか「コミュニケーションありき」なんだよね。ネットワーク=コミュニケーション。集まるのは結果であって、コミュニケーションが先。コミュニケーションの果てに知の集合があるという発想かな?すでにあるモノをかき集めるという覇道じゃない。
しかしどっちも蓄積型には違いないが、アメリカ企業が集めているのは膨大な人類の知の資産なのに対し、今の成功している日本WEBが集めているのは「Webサービス」があって繰り出される「ネタ」でしかない。
おそらく梅田氏はそういうことを指して「残念」といったのではないか。はてなは「ブックマーク」や「キーワード」などで個人の知を集合させようとしたが、結局はネタになってしまった。
そんな梅田氏が「棋譜」という膨大な日本の知の資産に惹かれた。たぶんそういう話だと思う。
ただね、ネタで繰り出されるMADやイラスト、2chのAAといったモノが果たして棋譜より知的価値として低いか?という点については疑問がある。歴史の差はあるけどね。僕はそんなに違いはないんじゃないか、と思っている。そしてユカタンはそこを突っ込んだ。後編で痛々しく「好みの違い」と答えざるを得なかった点はソコにあると思う。
それでね、じゃあアメリカならすごいか、というと、確かにGoogleを生んだのはアメリカの意識かもしれない。しかしマイクロソフトでさえもはや今から全部集め直そうにもGoogleの後追いにしかならないし、そういう覇の思想が日本にないことを嘆いても、仮に大日本帝国が世界を席巻していた歴史になったとしても結果Googleが日本に生まれたかどうかは分からない。
そして、Googleたちによる知の資産の集積があらかた終わり、誰でも知のデータベースによっていつでも過去の知を得られるようになったとき果たして人が求めるモノは何だろう?
それは案外日本的なモノかもしれないよ、と僕は思う。
羽生名人だって言ってるじゃない、「将棋界には高速道路が出来た、だが最後は渋滞している」って。Googleによってまさに情報スーパーハイウェイは出来た。で、そこから先に行くのは?
だから絶望してないね。
追記
ニコニコ動画が、もともとYoutubeの動画に乗っかる形で始まったことを忘れている人も多いかもしれない。Youtubeの動画を引っ張ってきてツッコミを入れるシステムだったのだ。急に日本からのトラフィックが跳ね上がったことに驚いたYoutubeが怒って今の自前状態になったのだ。しかし、「残念」なWebが何をしようとするかの一つの例として象徴的なサービスだと思う。