マクロスFは出来が良すぎる故になにか危うい

超絶クオリティで大絶賛放映中の「マクロスフロンティア」だが、早くも「危ういなあ」と思うようになった。クオリティが、ではなく完成度が高すぎて引っかかるところがどこにもないのだ。毎回毎回、歌、戦闘、ボーイズミーツガール、ギャグ、もうサービス満点、これでもかと詰め込み見事なテンポで展開する。キャラクターもオタク受けしそうなタイプは一通り揃えてちゃんと見せ場もある。だがそれゆえに全て類推できてしまい「ああ、そういうサービスね」という諦めというか。アルトのオヤジとの確執も「ハイハイ、海原雄山ね」で終わり。ランカのトラウマにしても「ハイハイ、ポジティブシンキング」で終わり。以下全キャラクターに「ハイハイ」が付く。
初代「マクロス」の前半の退屈さ、主要キャラクターの活躍のなさなど、もうイライラするほどであったが、それ故に後半へのテンションアップというのは甚大なモノがある。「誰、このおばさん」からあのラストを誰が想像しえたか。
(似た感じとしてはマクロスゼロマクロスプラスがある。OVAなのにあの退屈さはなんだ!と思えるマクロスゼロだが、それ故に印象的。逆にプラスはサービス満点な一方で、ハイハイYF-22とYF-23の米軍試作機争い+仲良し3人カップルの色恋に決着がつくアメリカン青春ドラマね、ハイハイ、という感じ)
 マクロスフロンティアでは、あの第一話の素晴らしい出来があるため、あとにどれほど刺激的な展開を持ってきても、あのテンション以上に盛り上げるのが難しい。にもかかわらず、ずっと1話テイストでお話が作られているのだ。僕はすでに1話のテンションからは同じような興奮が得られなくなってしまった。同じ作りをしているのが「グレンラガン」で、もうどんなに世界を破滅させるぞと刺激されても不感症になってしまっていた後半は非常に冷めてみていた。(螺旋王との対決で既にピークは過ぎていた)

前テレビシリーズ「マクロス7」は非常に雑で4クールもつかって延々をあの話をする必要があったのかはかなり疑問だが、銀河に向かって歌い続ける「熱気バサラ」という強烈なキャラクターは、どうやっても記憶に引っかかり続ける。果たしてマクロスFは「ああ面白かった」以外の引っかかりを残すことが出来るのだろうか。

 とはいえまだ始まったばかりなので、中盤鬱々とした展開などあるかもしれないし、見れば面白いことは確かなので視聴をやめたりはしないと思うけど「面白さ」に「心に引っかかる何か」が加わることを期待したい。そういう意味では途中「文句が出るぐらいのお話を」「全体を計算して」いれてくる位のワザがロングシリーズには必要なのかもしれない。