ムービーをみて「まいったー」と声を上げているメーカーは多いのではないか。

いやはや、MacBookのボディの製造工程にはまさに「デザインと生産性の融合」がなされている。まず、なんで切削が非常識なのか、というと

  • 加工に時間が掛かる→高コスト
  • 削りクズが大量に出る→高コスト
  • 大量生産しても、生産性が上がりにくい。

メリットとしては

  • 設計変更がしやすい。
  • 初期投資が抑えられる。
  • つまり少量多品種に向く。

というのが一般的なところだろう。でもAppleのやり方はまったく逆だ。

  • 加工に時間が掛かるのなら、単純で短い工程をたくさん並べる方法にすればよい。

というところだ。これは初期投資がかかるが、ここでデザインが効いている。普通、切削加工のマシニングセンターは3次元がメインになってきて(2次元もあるが)一度掴んだワークはなるべく離さずマシーンのほうが複雑に動くために加工マシンが複雑高価になり、加工時間も長くなる。しかし、MacBookは「側面が垂直にまったいら」なので、殆どが「垂直エンドミルのXY動作+Z高さ」だけで済む。しかも長方形で側面がまったいらなのでワークの位置決めは非常に簡単で高精度にできるから、工程をいくつもにわけても精度のズレがでずらい。安い2次元+Z軸のみ加工機を大量に並べるという方法だと推測できる。しかもあの形状なら使うエンドミルはきわめて一般的な汎用品だろう。

これは、切削加工の常識を正反対にしてしまうやり方で、それができるのはデザイン段階、はてはさらに上流の構想段階で「この方式と基本的な形状で長くやる」というところまで考えていないと出来ない。とはいえ、小変更はけっこう容易だろう。金型がいらないからだ。ただ、大規模に形が変わるなら生産ラインを全部作り直しになるが、ノートブックPCの形が平たいものから丸くなったりはしないだろう。小変更ならこの方法は非常に合理的に思える。

  • そして、この方式での生産性を最大限考えた上で、カッコよさと使い勝手も考え込まれ、しかも長くこの形状で行くという決意があるデザインになっている…もしラインアップのデザインがバラバラなら大変なことになる。

それにしても恐れ入るのは、劇的なコストダウンは望めないが、トータルではいけるはずという長期展望だ。この形状やアルミカラーがまったく受け入れられなければそれは大打撃になるが、それはない、あっても乗り切る自信、賭け。もちろんトータルでの利益は考えてあるはずだが、そしてそこまでしてなにを求めるのか…「それはかっこよさだ!」こんな決断ができるという事が凄い。

まあ、それでも使いにくいんだけどなー(笑)